ネットクチコミ座談会(その2)

ブロガーによるネットのクチコミは実際の消費行動に影響があるのか

河野「ここでアカレンさんに伺いたいのですが、認知経路でクチコミというのは、ニッチになればなるほどその傾向が強いと思うんです。高級シャンプーとか職人が作る箸とか、認知経路をたどるばクチコミが大半でしょう。ただ、これまでのクチコミってすごく身近な人、つまり親や兄弟、友だち、親戚のような、実際に会ったことがある、顔を知っている人同士のクチコミだったと思うんですね。でも、今やろうとしているのはネットのクチコミで、会ったこともないし顔も知らない、本名も知らないような人同士の間でクチコミを起こそうとしているわけでしょう。こういうことは実際に成立すると思いますか?」

アカレン「ケースバイケースだという話になってしまうんですが、成り立つかと言われれば成り立つと思うんですよ。ただ、人間って自分なりのフィルターを持っていて、判断しているじゃないですか。ブログの本文から本心やウソを読み取って、各自がその都度解釈しているだけだと思います。例えば『ビリーズブートキャンプ』だと、私が読んだブログには最初はアフィリエイト※目的のブログもほとんどなかったし、本当にダイエットに挑戦している人が多いんだなくらいの感じで、私の中でも好印象だったんです。私はもともと運動好きだから、楽して痩せるよりはいいんじゃないかと思って、そういう部分でも信じられたんです。でも話題になるにつれて、アフィリエイトの対象になってくると『買いました。今日から初めてやってみます』しか書いていないブログとかも出てくるんです。それを本心で書いていたとしても、少しも心が動かない。そう考えると、ブログっていうものを取り上げて成り立つか成り立たないかと評価するのは難しいでしょうね」

河野「ぼくは今の話を聞いて、発言主体が消え去っているなと思いました。発言内容と発言主体ってリアルな世界では必ずセットなんです。『ぼくが言った』ということを相手が信用するかしないかで、河野の言うことは信用できない、あるいは河野が言うことは信用するというように、発言主体に基づいて判断されることが多いんです。先生が言うからとか、学級委員長が言うからとか、この間ウソついたあいつが言うからというように、これまでのその人の行動や発言の実績と今回の発言内容の信憑性がセットで捉えられているんです。ブログのクチコミの場合、それがどこまでセットになっているのか疑問なんですよ。
つまり、さっきのダイエット日記の話だと、その人の実績がまるでないから信用できないとも言えます。検索エンジンでたどり着いた場合は、そのブログのこれまでの記事、つまり実績についてまったく読んでいないのだから、記事が壁の落書きと変わらない。そういうレベルの情報だとしか受け取れないから、信用しない。ブログに限らずネットを介してまったく知らない人の発言を読んで、それを信用するというのがどういうときにありえるのか、ぼくは疑問ですね」

アカレン「これは私の感覚ですが、昔に比べて今はネットもしくはブロゴスフィア※に書き込まれている情報が信用できるようになった気がしています。
ブロゴスフィアっていうのは有象無象のデータベースです。発言主体が誰だかわからない世界で、本来だったら信頼なんてできないと思うのですが、前に比べるとブロゴスフィア全体の情報っていうものは信じても良いような気がするんです。これまでは情報の集積体というのは2ちゃんねるがすごく大きくて、ブログっていうものはなかった。2ちゃんねるはそれこそ落書き的なものもたくさんあって、自分の中でセンサーを使って情報を選別して、どれが本当かを慎重に取り出していたんですけど、今はブログやSNSがあって、ある程度の発言の信頼性、誰が言ったものなのかということが特定できるようになってきた。仮想人格かもしれないけれど、その仮想人格が言っているということはわかる。そうすると、ネットの情報は信頼できないという状況が当然だったのが、基本的には信じてもいいのかな、という状態になってきたんじゃないかと感じています」

河野「アカレンさんはブロゴスフィアとかCGMと呼ばれるものの中で、クチコミという情報交換、とくにレコメンドの役割が機能すると考え、仕掛ける余地が残っていると思っているわけですね。アカレンさん自身はこれまでのパソコンやインターネットの経験を経て、ウソの混じっている中から本当らしき情報をピックアップするスキルを養えたと思うんですけど、それって誰にでもできることなんでしょうか」
アカレン「たしかに情報を選別する能力というのは世の中の人よりあると思います。でも実際にはそうじゃない人というのが当然多いでしょうし、多くの人は私のように選別できないかもしれませんね。それこそアフィリエイトだけを目的にしたスパムブログ※があるということも私たちは知っていますが、世の中の人たちは知らないでしょうし」

河野「そうなんです。断言しますが、世の中の大半の人はネットの情報を読み解く能力がありません。これは認めざるをえないんです。だからこそ今、クチコミが効くという論がまかりとおるとも思っています。それをぼくが好きか嫌いかで言うと、嫌いですし、認めたくないです。だけど現実として、簡単にダマされる人たちが世の中にたくさんいて、そこでダマして儲けることが、法律とかルールに則っている以上は、そういうビジネスを認めなくちゃいけないのかなと少しだけ思ってます。大嫌いですけどね」

アカレン「アフィリエイト自体を知らないから、絶賛されているブログのカラクリを知らない状態はたしかにありますね。リテラシー※がない人は、書いてあるままを信じてしまうのかもしれないですね。仮に良いという記事が10件あって、悪いという記事が5件あったら、良いというほうが多いから良いんだと思うかもしれないし。私たちなら10件の記事内容を精査して、本当に信頼できる実数を比較できるんでしょうけど、それをすべての人に求めるのはおっしゃるとおり、難しいですね」

(まだ続きます)

株式会社プレックスから発売されているフィギアを利用させていただきました。
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