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石塚さんの講演「米ザッポスに学ぶコンシェルジェ対応 ―"とびきり親切なコールセンター"の秘密」を聞いてきた

今日は池袋のサンシャインシティで開催されている「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス2011 in 東京」という仰々しいタイトルの業界イベントにいってきました。
ちょうど昨日から東京に来てたので、石塚さんが基調講演されるなら聞いていこうと思って。で、申し込もうと思ったら満席で、石塚さんたちのご好意で関係者席に座らせていただきました。ズルしてるみたいで申し訳ないですけど、『ザッポスの奇跡』の帯を書いたのでそのくらいはと甘えさせていただきました。

ぼくは石塚さんと仲がいいので、かなり贔屓目なレポートになると思いますけど未来の自分のためにもちょっと整理しておきます。

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冒頭に「今日はザッポスが"なにをしているか"ではなく、"なにを考えているか"を聞いてほしい。日本とアメリカはちがうので、表面的なことを真似しても意味がない」ということをおっしゃってて、日本でザッポスを語る人は誰もこのことをいわないよなあと思いながら聞いてました。
最近は沈静化してきた感じもするけど、ザッポスのまちがった持ち上げられ方がぼくは嫌いで、べつにお祭り騒ぎをして、スタッフを全員正社員にして、マニュアルを全廃して、24時間365日のコールセンターをつくればうまくいくなんて話じゃないんだけど、現場感のない人はそういう象徴的なチェック項目だけなぞろうとする。ダメ、ぜったい。
(現場経験はなくてもいいけど、現場感覚は必要ですよね)

最初にザッポスを本格的に日本に紹介した石塚さんだけがそのことに言及してて、後追いの人たちがそれをいわない(いえない)ってのは残念だし、ひどい話です。

つづいて「ソーシャル(Social)」について。これはたぶんわかってない人も多いだろうなあと思いながら聞いてました。

ソーシャルって社会全体で起きてる現象の話と、個々のサービスレベルの話(≒ソーシャルグラフ)と、都度読み替えなきゃいけないし、前者の場合はケータイの普及なんかもすごく大きな影響を与えてます。個人に直接メッセージを送りつけられるわけだから。もちろんブログやプロフのようにソーシャルグラフが構造化されてないものも、社会や市場を考える上ではとても重要だし、そういう大小硬軟さまざまなレベルでの「ソーシャル」という概念を理解しないといけないんだけど、とくにツイッター以降に発言しだした人たちはそれがすべてと思いがち。彼らはツイッターもFacebookも同じように使ってるから(同じ顔ぶれとつながるから)ちがいもわからない。こういうのってすごくずれてますよね。

ザッポスの最新データ。働きたいランキングに入ったり、顧客が選ぶ良いサービスの会社に選ばれたり、あいかわらず評価が高いし、売上も今年は20億ドルくらいに達する予定で伸びている。
メディアが取り上げるのは顧客の感動体験がストーリーを持ってるからだし、あのデコレーションしまくった派手なオフィスが「画になる」からだろうけど、ザッポスを語るときに「収益的に成り立っている」というのはとても大事なポイントです。これは糸井さんがいう、経済的自立の話と近い。

経済的に自立して持続している
『ユニークな人々』に
ぼくの興味はあるわけです。
『おもしろい』ということと、
『食えてる』ということが両立してることが、
さらに希望のある
『おもしろい』につながるんだ

前から思ってたことだけど、ザッポスは「ほぼ日(というか東京糸井重里事務所)」に似てますよね。これも糸井さんの言葉を借りれば「出入り自由の宗教」という会社のつくり方。
ぼくがザッポスに惹かれたのはそういう部分だし、常識なんてほっといてどうすれば自分たちもお客さんもハッピーになるかを超現実的に考えたのがザッポスであり、「ほぼ日」だとぼくは思う。そう、彼らはぼくから見るととても現実的な人たちで、ぜんぜん理想論とかじゃないんだよね。
そのへんの「悪いことしにくい組織づくり」みたいな考察はmixbeat showcaseで話したスライドがあるので、紹介しておきます。

話を戻すと、ソーシャルな世の中で企業はどう変わるか(変われるか)というのが今日のテーマで、そのなかでコールセンター(コンタクトセンター)やカスタマーサービスがいかに重要かという話です。

ザッポスではコンタクトセンターを「心臓部」と呼んでるほど、事業戦略上の中心に位置づけてて、そこで働くスタッフにプロフェッショナルである自覚や、なにより重要な仕事である意義を伝えてます。
この「働く意義を明確に示す」というのが大事だよねという話。
かつては「ES(従業員満足度)」なんていうふざけた言葉が流行ったけれど、そしてもちろん福利厚生は大事だけれど、働くことの意義や自分の存在理由をはっきり伝えてあげることのほうが効果的だという点はぼくも同感です。

あ、あと「24時間」というのもじつは「ほぼ日」との共通点で、ザッポスはお客さんがいつでも好きなときにサービスを受けられるようにと24時間365日の体制を敷いてるんだけど、じつは『ほぼ日手帳』がいちはやく24時間対応したのも「コンビニが街中にできてからぼくらの生活って24時間前提になっちゃったよね。なのになんで手帳ってビジネスタイムだけなんだろう」という疑問から生まれたそうです。どちらも現実を都合よく曲解せずに、そのまま受け止めた結果として24時間の対応をしてるところが興味深いですよね。
これは前から思ってたことなんだけどいい機会だったので書いておきます。

つまり石塚さんは「コンシェルジュ(コンシェルジェ?)」って表現を使ってたけど、同時に「コンビニエンス」という捉え方もできると思います。

ということで移動するので、つづきはまたあとで。

(ここから追記)

新幹線でつづきを書きます。
こうやって途中でアップすることはこれまでやってこなかったんですけど、まあイベントレポートみたいなものは可能なかぎり早いほうがいいわけで、あまりに部分すぎると意味がないけど、ある程度のボリュームがあれば先出ししちゃったほうがいいかなと今回思いました。まあいつものように実験ですけど、じっさいどうですか? 二回読むからめんどくさいですかね?

ではつづきです。

このあと石塚さんは「サービスの価値は受け手の主観によるもの」と話されてました。これもぼくがよくいう「評価は他人が決める」というのと共通してますね。さらにいうと「満足」や「感動」はその人の事前期待のレベルによって変わるので、同じサービスを提供しても不満に感じる人もいれば、感激しちゃう人もいる。

その流れでご自身の体験談について触れられます。こういうスライドにない話はそれがアドリブであれ、仕込みのネタであれ、重要なエッセンスが含まれてるのです。ぼくが話すときがそうだからきっとそのはず。
今日の話はPCの周辺機器(カードリーダー)を買ったらちがう商品が届いたので、正しいのを送ってくれとサポートに伝えたら、その前にいま手元にある商品を送れと、それが届いてから正しい商品を送るという対応をされたそうです。急いでるのに。

急いでようがなかろうが、お前のミスなんだから最速の手配をしろとぼくなんかは思うのですが、けっこうこういうルールで運用している企業は多いのではないでしょうか。おそらく「悪用されるかもしれない」という懸念とリスクヘッジなんでしょうけど、そもそもが自分のミスであるということを忘れてるんじゃないですかね。悪用されたくないなら誤発送しなけりゃいいので、負担をお客さんに押し付けるってのは論外です。

同じシチュエーションでのネタはぼくが『神対応ってなんだろう』という電子書籍に書いてるんですけど、タイガー魔法瓶では以下のように対応しています。

故障した魔法瓶の修理を依頼したら、こちらの商品を送る前に同型の魔法瓶が翌日に届けられた。そこには着払い伝票も梱包されており、届いた箱に入れて送り返すだけでいい状態になっていた。多くの企業は修理対象の商品の到着を確認してから対応をスタートさせるが、顧客を信用し、いちはやく代替品を送ったことが感動につながっている。

けっこういろいろ整理したのでよければお買い求めください。

でですね、ぼくはこういう自分たちのミスを正しく認識しないとか、お客さんをないがしろにするところがありえないと思うわけですが、こうした企業が平気で「顧客志向」とか語っちゃうのもよくある光景なんですよね。ふざけんなといいたい。

ザッポスの顧客本位の対応は結果的にクチコミにつながり、それは新規顧客の獲得にもつながっています。ぼくはここに多少の計算がないとは思わないけど、大事なことは「公平に運用している」ところです。
前に「あるステーキハウスの事例で、相手が有名人だったから直接届けて話題になった」というような話を聞きましたけど、これとはぜんぜんちがいます。相手が有名人だろうがなかろうが関係なく、ひとりのお客さんとして大事に扱うことが問われているのです。ぼくはいまだに、なんでステーキハウスの事例が絶賛されているのかまったくわかりません。

今度のセミナーの資料に入れたんですけど、ぼくは「ソーシャル」というのは情報を拡散するものではなく、その内容の信頼性を担保・裏付けするものだと思っているので、そこをはきちがえたらダメだと思いますね。

印象に残った数字の話も。
ザッポスのコンタクトセンターの離職率は年間でひと桁パーセントらしいです。おそらく最後の採用辞退ボーナスをクリアした人(正式に採用された人)が母数になってると思いますけど、三ヶ月から半年でどんどん辞めちゃう多くのコールセンターとは比較にならないですね。
もちろんこれは給与などの待遇面も大きく影響してるし、教育プログラムなどの仕組みがしっかりしてることも大きいです。ただ繰り返しになるけど、プロとして仕事に従事することの意義をはっきり伝えられている点にあるのも事実です(そのメッセージのひとつが正社員雇用なわけで)。
その裏返しの数字が求人の倍率で、いまは100倍だそうです。

最後に3点、要点を話されてたのでそれを書きます。

まずたびたび出てる「事業の革新的な定義」で、それを定義付けるだけじゃなくて、ちゃんと個々のスタッフに働く意義として明確に伝えることが大事。
次に「顧客サービスはコストではなく投資」で、これは『ザッポスの奇跡』でも引用されてましたね。ただここはちょっとぼくなりの反論というか補足があるので後述します。

最後が「感情のつながりが最大の財産」です。トニー・シェイの「お客さんは『なにをしてくれたか』は覚えてないかもしれない。でも『どんな気持ちにしてくれたか』は決して忘れない」じゃないですけど(あれはじつにいい言葉ですね)、企業とお客さんをつなぐものは感情がいちばん強いということをぼくらはもっと意識すべきです。
ちょうど石塚さんが「ポイントプログラムはぜんぜんちがいます、あれはただのディスカウントプログラムで、競合店がよりお買い得な施策をすればそちらに流れてしまう」とおっしゃってたけど、まさにそのとおりです。CRMにポイントプログラムなんて入れるなよと思います。もちろんぼくは過去にFSPとかもさんざん考えてきたし実践もしたけど、それでわかったことは「金で人(お客さん)を動かすことはできても、人をつなぎとめることはできない」ということでした。ポイントプログラムはほんとうに顧客維持に、さらにいえば利益増加につながってると思ってますか?

石塚さんはゲイリー・ハメルの「次世代の経営課題は企業の人間化」である、という言葉を引用されてたけど、アクティブサポートみたいな施策はまさにこの流れにあると思います(軟式アカウントは企業のピエロ化なのでちがいます)。

締めとして企業文化の話をされてました。
企業文化というのは「経営者も従業員も全員が共通に持っている価値観」のことで、ぼくは「ジブンゴト」という表現は嫌いなのですが、ひとり一人のスタッフが本心から「この場合はこうすべき」と考えた結論が同じであるということが何よりの強みになるんですよね。
「企業文化を中核に」というのがもしかすると「顧客志向」みたいにコピペされるのかもしれないけど、そこを本気でわかってるのかということはちゃんと考えたほうがいいです。
石塚さんが笑い話としておっしゃってたけど「コアバリューをコンサルにつくってもらう」なんてのは最低の話ですよね。

という感じで、手元のメモを見ながら、大半はぼくの感想になってますが、こんな感じの講演でした。明日も(もう今日か)会場ではビデオ視聴できるそうなので、お時間のある方は池袋までいかれるといいかもしれません。でもサンシャインって駅から遠いですよね。ひさしぶりに池袋にいって迷いました。

講演終了後に展示会場にいくと、やれ「ソーシャル」だとか、やれ「CRM」だとか「VOC」だとか、はては「アクティブサポート」まで、いろんな売り文句が並んでいて、ほんとうにわかっているんだろうかと激しく不安になりました。
お姉さんが予想以上にいっぱいいたのでびっくりしましたけど。こういうイベントでもキャンギャルは成約率に影響するんですかね。

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で、「うちにお任せください」のオンパレードだったんですけど、残念ながら日本のコールセンター事業者は(企業側のリクエストに応じてきた結果とはいえ)「安い」ことが競争条件になってしまったので、品質については二の次どころかまったく頼りになりません。これは彼らが悪いんじゃなくて、コールセンターをコストセンターとみなしてきた企業側の責任です。あとは急成長しちゃったネット業界の弊害ですね。急増する問い合わせにとにかく対応するために大量雇用・即戦力化が急務だったので、バイトをかき集めて、数日のトレーニングで現場に出ることが求められてきたので。だからマニュアルどおりの対応しかできないという悪循環。

ただしいざ企業が「これからは顧客にしっかり寄り添うコンセルジュのようなサポートを」とリクエストしても応えられる業者はないと思います。しょうがないんだけど。
だから現実的に考えればザッポスのようにコールセンターの内製化は選択肢になるんでしょうけど、これはこれでけっこうな茨の道なんですよね。

ていうか、いちばんテンション上がったのが宮城県のブースだったという現実。

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以下は蛇足みたいなものですが、さきほどの「顧客サービスはコストではなく投資」についてです。
ここが意味するところはもちろんいうまでもなく、コストと考えるから削減ばっかり考えちゃうので、その考えを改めようよって話なのですが、「投資」という言葉は少なくともいまの日本では誤解を生むだろうなと思ってます。

というのも「投資」といった瞬間に「ROIはどうなんだ?」という効果の話が出てくるからです。効果を無視しろ、ROIなんてどうでもいいというわけじゃないんですけど、少なくともカスタマーサービスやブランディングの話は中長期的に効果を見るべきだし、全体的に数字を捉えるべきです。
もっというと「どう考えてもやったほうがいいだろうし、効果を測定するコスト(ここは明確にコスト)を考えたらそれがムダなんだから、とっととやろうぜ」というのがこれからぼくらが向きあうサービスの本質なんじゃないかと思うんです。
アクティブサポートなんかもきっとそうですね。「これをやればいくら売上が上がる」というような短期的かつ部分的の矮小な話にしないで、もっと大局的にとらえた施策の結果として、強固なブランドは構築され、顧客に愛される企業が生まれるのではないでしょうか。

だから「投資」じゃなくて、もうちょっと適切な表現があるんじゃないかなあと思ってるんですけど、いまいちいい言葉が思いつかなかったです。
このへんの話はいま書いてる途中の原稿があるので近いうちに公開できると思います。

あとこうやってコールセンターの組織運営のこととか、カスタマーサービスについてあれこれ真剣に考えてると、コールセンターの立ち上げに参加してみたくなりますね。その大変さもよくわかってるから、仮に依頼があってもかなり悩むと思いますけど、もし興味があれば(そしてお金払ってもいっしょにやりたいと思っていただければ)お声がけください。

[追記]
SlideShareのは完全版のがあったので、そっちも貼っておきます。

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コメント(4件)[コメントだけのRSS]

河野さん
ブログに感想を書いていただいてありがとうございます。
私はコンタクトセンターの専門家でも、カスタマーサービスの専門家でもなく、あくまで「米国ビジネスの研究者」ですので、いったいどんな話をしたらコンタクトセンター関係者の人たちにピンときてもらえる話ができるのか、正直頭を悩ませました。
しかし、結局のところ、私が言いたかったことはひとつで、それは、「ソーシャルな時代には人が中心」。この人というのは、社員だったり顧客だったりするわけですが、ソーシャルの時代に企業がまずやるべきことは「人の感情を重んじる」ことだと思うんですね。「働くことの意義」を伝える、考えてもらう、というのもその一環だと思います。
…というわけで、続きも楽しみにしています。

石塚さん、こちらこそ今日はありがとうございました。いろいろ考えながら聞いてたのであっという間でした。

いま起こってるのは、最先端の技術を使って、超原始的な商いの本来の形に回帰する、ということだとぼくは思ってるので、まさに人と人の触れ合いや付き合いが最重要なのだと思います。

ということで、つづきを書きました。

河野さま
昨日、ご挨拶させていただきましたリックテレコムの矢島です。
弊社イベントにご来場いただき、誠にありがとうございました。
また、記事もありがとうございます。コールセンター業界に対するご意見、とても貴重なものだと思います。
業界では「生産性/効率性のみを優先するオペレーション」を真摯に見直そうと考えている方も大勢いらっしゃいます。昨日の石塚さまのご講演が、少しでもそうした方のヒントになればと思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。

矢島さん、このたびは関係者席で聴講できるようご配慮いただきありがとうございました。

ぼくは「生産性/効率性のみを優先するオペレーション」が悪いのではなく、そこで指している「生産性/効率性」を測る尺度が短期的すぎるのが問題だと思っています。

だからこそもっとブランディングとつながっていくような施策を企業全体で見直していくべきなんですよね。少なくともザッポスはその視点で動いてるとぼくは感じています。

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