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ほとんどの「おもてなし」は知られてない

泊まりたいけど泊まれてない宿がふたつあって、それは加賀屋と星のや京都なんだけど、加賀屋についての記事を読み返したので、ちょっと思うところをまとめていました。1年前の記事だけど、いろいろ考えさせられますね。

ここに書いた通り、サービスカンパニーには数多くの「伝説」があるけど、現場ではそれは「特別」なことじゃなく、極めて「普通」のこととしてやってるんだと思う。誰か特別なスター従業員がやったわけでもなく、他の誰が担当しててもおかしくないような、つまりサービスが人に帰属するのではなく、組織に帰属しているのがサービスカンパニーの本質なんだろう(それを持続しながら規模を拡大するのが企業成長の難しいところだと思う)。

そして「おもてなし」というのは、客との「駆け引き」ではなく、本気で誠実に彼らのことを考えた行動の呼び名でしかないんだと思う。

ぼくの昔話をすると、ビーケーワン時代にシステムトラブルで原因で強制的にお客さんの注文がキャンセルになってしまったことがある。対象は約2000件。ビーケーワンのスタッフはこういう土壇場でがんばれる人が多かったので(こういうトラブル対応だけじゃなく、ハリポタの予約開始日に深夜まで特設ページを作ってくれたりね)、このときも特別対応チームを作って、この方々のためになにができるかを急遽みんなで考えた。お詫びにポイント付与するとか、次回送料無料にするとか、詫び状をお送りするとか、いろいろアイデアは出たけど、同じ本を買ってきてでも補填する以外に彼らに誠意は示せないというのが最終的な結論だった。まあ当然なんだけど、これが当然だという感覚が大事なんだよね。いま思い返してもうれしい。

で、じっさいに買いに走ったわけです。ネット書店の社員が紀伊国屋やジュンク堂、三省堂に電話注文してました。三省堂にはExcelを送って調べていただいたりしたなあ。当然、定価で仕入れることになるから損失が出るので、ぼくはボスに直談判(こういうときに即断即決してくれたのはすごくありがたかった)。

もちろん電話だけでは半分くらいしか揃わないので、週末にリスト片手に書店巡り。たしか翌日が土曜日だったはず。特別対応チームの連中が休日出勤してくれて、クルマを使って都内の書店を回って電話注文した商品の受け取りと未調達の本探し。
どうでもいいけど大手町の紀伊国屋は週末休みでびっくりしたのを覚えてる。

けっきょく1200冊くらいは手配できたのかな。お客さん側からのキャンセルもあったりしたので、最終的には7割程度の納品率だったと思う。
ざっと20~30万円の追加経費ではあったんだけど、経緯も含めて役員会で報告する必要が当然あったので説明したら、その席で某有名企業の社長から「それは対外的に言わなきゃダメだ、アピールするチャンスじゃないか」と言われた。でもぼくはそれがぜんぜん納得できなかった。
ぼくのプライドが許さないとかそんな話じゃなくて、そもそも自分たちのミスから始まってるのに「俺たちがんばりました!」とアピールするのは恥ずかしいことであっても、けっして誇らしいことじゃないから。

そのときは気の利いた反論もできず、「考えてみます」だかなんか適当な返答をしたんだけど、いまでも忘れてない。そのくらい「えぇっ!?」って思ったんだよね。
トラブルが起こってる以上、その事実は隠せないし、当時もきちんと何が起こっているかを説明はしたけど(もちろん社員が都内の本屋をかけずり回ってるとか定価で仕入れて補填しますなんてことは言わない)、わざわざ自分から誉めてもらおうと言うような話じゃない。
いつか昔話としてできりゃ十分で、まあいまこうして5年以上前の話としてブログに書いてるわけだけど、こういう恥に対する感覚って大事だと思う。その感覚をどこかに忘れてしまうとマッチポンプ的な自作自演をしてみたり、行列要員のバイトを雇ったりしちゃうわけで。

「おもてなし」とか「ホスピタリティ」に値するような対応はそれこそいろんな企業で日々行なわれているんだと思う。自分たちからわざわざ言わないからメディアが取り上げないだけで。
そしてその対応数が閾値を超えたら漏れ聞こえるんだと思う。それが加賀屋であり、ザッポスなんだろう。ただこれってけっきょくビジネスの規模によって左右されますよね。年間20万人を接客する加賀屋と、年間200人を接客するペンションじゃ接客数そのものが1000倍ちがうわけで。

だから今回も加賀屋を題材に取り上げるのがほんとにいいことなのかとけっこう考えた。半年以上このネタを寝かせてたくらい。まあそもそも加賀屋に泊まったことないしね。
ネットクチコミとか言うとちょっと気持ち悪いんだけど、そもそもインターネットによる情報共有の結果として、普通に「おもてなし」を実践しているペンションにスポットライトが当たればいいなと思うし、一部のPR上手な(でもサービスが伴ってない)企業が駆逐されればいいなと思う。

サービスカンパニーであればあるほど「普通の対応なんだから、わざわざ言わない」ってことをちゃんと認識しておくのも、ひとつのリテラシーですよね。

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